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扉
ずっしりと厚く重い扉に 頑丈な鍵がかけられていた。 ほんの少しの隙間もない。 扉の向こうには 祝福に満ちた日の光が さんさんと降り注いでいる。 そうわかっているのに 開けようとはしなかった。 扉の内側の 無彩色の世界が好きだと思っていた。 ひんやりとした空気が好きだと思っていた。 何を恐れていたのだろう? きっと 自身への愛 自身への信頼 自身の幸福 それらを手にすることは 許されないことだと思っていた。 誰にでも与えられている権利なのに 自ら放棄していた。 今 ゆっくりと扉を開く。 日の光のあたたかさを全身に浴びながら。 その輝かしいほどのまぶしさに 喜びの眩暈すら感じながら。
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