今日は服を脱がないで。
聞き慣れたような、
でも、思い返してみると、
聞き慣れていない声の持ち主は、真顔で言った。
彼とこのホテルで会うのは三回目。
最初の二回は、ただ寝た。
体の欲求のままに。
こっちへ来て。
何故だか、言われるがままに体が動く。
頭には、
何が起ころうとしてるのだろう?
と、疑問が浮かんでいたけれど。
枕を集めて背もたれが作られたベッドに座るよう促され、
靴を脱ぐ。
その動作の一部始終を見つめられている視線に、
今まで感じたことのない気恥ずかしさを感じる。
枕にもたれかかろうとすると、
彼がその間に割って入ってくる。
私の背中をすっぽり包み込み、後ろから抱きしめられた状態。
そのまま、二時間、TVで映画を観た。
たまに笑い合ったり、
たまに感想を言い合ったり、
たまにキスしたり。
今までの欲望に直結するようなものではなくて、
陽だまりのような、暖かくて心地いいキス。
普段のお互いの声に耳が慣れた頃、
胸の内に新たな感情が芽生えた。
じゃあ、服を脱いで。
彼は微笑みながら、そう言った。
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