Sunday, June 29, 2008

背もたれ

今日は服を脱がないで。




聞き慣れたような、

でも、思い返してみると、

聞き慣れていない声の持ち主は、真顔で言った。



彼とこのホテルで会うのは三回目。

最初の二回は、ただ寝た。

体の欲求のままに。





こっちへ来て。





何故だか、言われるがままに体が動く。

頭には、

何が起ころうとしてるのだろう?

と、疑問が浮かんでいたけれど。




枕を集めて背もたれが作られたベッドに座るよう促され、

靴を脱ぐ。

その動作の一部始終を見つめられている視線に、

今まで感じたことのない気恥ずかしさを感じる。



枕にもたれかかろうとすると、

彼がその間に割って入ってくる。



私の背中をすっぽり包み込み、後ろから抱きしめられた状態。

そのまま、二時間、TVで映画を観た。



たまに笑い合ったり、

たまに感想を言い合ったり、

たまにキスしたり。



今までの欲望に直結するようなものではなくて、

陽だまりのような、暖かくて心地いいキス。




普段のお互いの声に耳が慣れた頃、

胸の内に新たな感情が芽生えた。





じゃあ、服を脱いで。




彼は微笑みながら、そう言った。







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